English Baroque & Queen Anne Style
イングリッシュ・バロック&クイーン・アン・スタイル(1660~1714年)

1660~1714年の約50年の間に国王が次々に変わりました。チャールズⅡ世(1660~1685年)→ジェームズII世(1685~1688年)→ウィリアムⅢ世&メアリーⅡ世(1689~1702年)→アン(1702~1714年)。王の名前や王政復古にちなんだ様式名も残されていますが、ここではこの時代に特に流行したイングリッシュ・バロック・スタイルとクイーン・アン・スタイルをご紹介致します。
イングリッシュ・バロック・スタイルとクイーン・アン・スタイルを世に広めた有名な建築家はサー・クリストファー・レン(1632~1723年)といっても過言ではありません。レンは、17世紀にイタリア・ルネサンス建築の要素を取り入れた古典主義建築を英国で広めた建築家イニゴー・ジョーンズ(1537~1652年)やその後継者に続いて、フランス、イタリア、オランダから学んだ建築要素を加えて「イングリッシュ・バロック・スタイル」を定着させました。
シンメトリー(左右対称)の外観に古典主義建築のピラスター(壁面につける柱)や大きいコーニス(廻り縁)、楕円形や円形の袋とそれを縁どる華やかな装飾材、寄棟型の屋根にドーマー(屋根裏の窓)、中央に配置するドーム(丸みを帯びた塔)、そしてペディメント(正面の三角部分)や玄関周りの華美な装飾材による演出は英国中にインパクトを与えました。
インテリアでは天井壁画や、植物・花・人を模った様々なデザインのモールディングが使われました。レンと同時期に活躍した建築家も素晴らしいバロック建築を残しています。
またレンは、ハンプトン・コートの建築で赤レンガと白い装飾材のメリハリあるコンビネーションを生み出し、そのデザインはクイーン・アン・スタイルの流行の原点となりました。これを基に住宅では赤みのあるダークブラウン色のブリックをメインに、窓周りだけ赤いブリックを使ったり、白系のコーナーストーンを用いたりしたデザイン、玄関の上に彫刻された長方形の装飾的な庇を付けたスタイルが流行しました。